声の出演・『早乙女綾』(さおとめあや)
■竹取奇譚・冒頭
銀色の刃が、夜の闇に包まれた竹林の中で
殺意の閃光を放つ。
太刀を持つ男の名は、紫(むらさき)――――
鬼を狩る者だった。
紫「チッ! うっとおしいんだよッ!」
鬼「オオッ、オオオオオオオオッ!!」
;効果音・斬る音
ぼたりと地面に鬼の腕が落ち、
その傷口からどす黒い鮮血が飛び散る。
紫は鬼に比べたら小柄で、見た目だけなら
京中の女が振り返りそうな美青年だった。
けれど、その端正な顔立ちとは裏腹に
殺伐とした荒々しい殺気を吐き出している。
紫「さっさと死にやがれッ!!」
太刀を横になぎ払い、腕を斬った鬼の首を
宙に刎ね飛ばす。
;効果音・斬る音
紫「まずは、一匹ッ!」
弥生「紫、後ろッ!」
紫「なッ!」
;効果音・矢が飛んでくる音
ヒュンと唸った矢が、
彼の後ろにいた鬼の額を射抜く。
鬼「ギャッ、ガッ!!」
眉間に鋭く矢を突き立てられた鬼は、
そのままドサッと地面に倒れた。
弥生「油断しないでッ! 数が多いわッ!!」
弓を構えた黒髪の少女――――、紫と同じく
鬼を狩る者である弥生(やよい)が、彼に向かって
叫んでいる。
紫「分かってるよッ!!」
近づいてきた新たな鬼に、太刀を振り上げる。
;効果音・斬る音
紫「二匹目ッ!!」
肩口から心臓に掛け、銀色の刃が鬼を斬り裂く。
弥生「まったく、切りがないわね」
夜の闇の中に隠れてはいるが、その醜悪な殺意に
満ちた気配は、まだ三十体以上は残っている。
紫「疲れたのなら、帰れよッ!!」
弥生「冗談ッ!」
鬼「オオッ、オオオオッ!!!」
;効果音・走る音
鬼たちに取り囲まれないように移動しながら、
少女が新しい矢をつがえる。
弥生「鬼は、すべて倒すッ!!」
;効果音・矢が飛んでくる音
弓の弦が鳴り、弥生の矢が竹の隙間を
縫って走る。
鬼「エギギッ!!」
この障害物の多い竹林の中で、少女は一矢一矢
確実に鬼の急所を射抜いて倒していた。
紫「こっちだって! おらよ、三匹目ッ!!」
;効果音・斬る音
太刀を振り回し、紫が鬼を斬り捨てていく。
血の臭いが、周囲に漂う。
彼らは強かったが、鬼たちもまた仲間の屍を
文字通り踏み越えて戦いを続けていた――――。
京の都に鬼が多く出没するようになったのは、
ここ数ヶ月――――。
それとときを同じくして、ひとりの姫が京の者たちの
噂の的になっていた。
その者の名を、かぐや姫という――――。
<冒頭より、抜粋>
■あらすじ
京の都に現れた美しき姫、かぐや姫。
彼女のことは都中の噂となり、多くの男たちを
ざわめかせていた。
その一方で、都の周辺では鬼が頻繁に
現れるようになる。
まるで、誰かを捜すように徘徊する鬼たち。
それを狩る者たち。
――――京を舞台にした伝奇物語の幕が上がる。
<注意>
この作品は、短編小説集「淫」に収録されていた「竹取奇譚」に音声の追加(女性キャラのみ)、
テキストの一部修正、効果音BGMの追加などを行なったものです。
また、本作品は18禁作品ではありません。